なんでもレビュー

XXXG-00W0 WING GUNDAM ZERO(Endless Waltz Version)
ウイングガンダムゼロ
(エンドレスワルツ版)

(EMIA版)
定価2625円(税込み)、2007年9月発売
(名前をクリックでAmazonの通販ページへ)

 OVA「新機動戦記ガンダムW Endless Waltz」および劇場版「新機動戦記ガンダムW Endless Waltz特別篇」の主役機、EW版ウイングガンダムゼロ、通称ウイングガンダムゼロカスタム(ゼロカスタム)です。
 TVシリーズ「新機動戦記ガンダムW」での激戦の後、主人公達の意思で太陽へと廃棄途中だったガンダムの一機。
 TV版と同名の機体ながらデザインは激変している。設定的にもTV版とまったく同じで、OVAおよび劇場版ではこのデザインのガンダムでTVシリーズの戦いを乗り越えてきたことになっている。斬新な試みで、残る四機のガンダムも全てデザインが変更となっており、更には五機全てのパワーアップ前のバージョンも劇中未登場ながら、EW版のデザインを元にしたリファイン版が存在する。
 正式名称はウイングガンダムゼロだが、一般的にはプラモデルの商品名だった「ウイングガンダムゼロカスタム」を略して「ウイングゼロカスタム」、「ゼロカス」の愛称で呼ばれる。初期のプラモデルでは五機のガンダム全てに「カスタム」の名称が付いており、劇場版パンフレットなどに掲載されたパワーアップ前のリファインデザインのものは「アーリータイプ」と呼ばれている。
 現在ではこの商品のように「カスタム」は「エンドレスワルツ版」、「アーリータイプ」はデザイナーであるカトキハジメが大幅なデザインリファインをした際に付けられる「Ver.KA」の名で商品展開されている。が、やっぱりファンは「ゼロカス」に「アーリータイプ」と呼ぶ事が多い。
 さて、このゼロカスタムはゼロのネオバード形態(変形)を搭載しておらず、生物的な羽を持ったデザインになっている。
 写真の状態が大気圏突入形態なのだが、劇中では大気圏突入の際にはこの状態になっておらず、普通に交戦状態のまま突入して別シーンへ移行し、ウイングゼロへ場面が戻る時にこの状態から羽根を広げたというだけである。ウイングゼロだけでなく、他の四機全ても大気圏突入を単身で行っているため、どうも彼らのガンダムは通常装甲で大気圏突入が可能なようだ。



 ウイング展開。
 劇中では初めてウイング展開した際に鳥の羽が散る演出があり、思わず見惚れたもんです。


 前横後
 かさばるので羽は外しました。
 画像編集する際に初めて気づきましたが、腰をひねった状態で写真を撮っていたようです。
 EMIAだけあって、モールドが各所にひっそりと存在しており、全塗装でディティールを…………ダウンしてるよねコレ。
 このEMIA版ゼロカスは後述しますが凄まじく塗りが雑です。いっそ全塗装をやめて欲しいと思うぐらい。
 ちなみに私の購入した製品は発売日に買ったのにセロハンテープが二度貼りしてあったので、恐らく検品の対象となったものだと思いますが、「これで検品にGOサイン出したのか?」というぐらいボロボロ。検品の審査基準自体が劣悪なのがよく解ります。


 付属品1/4
 ツインバスターライフル用両手持ち手、指を揃えた平手が左右、表情を付けた平手が左右、左右バスターライフル持ち手、左右ビームサーベル持ち手、ビームサーベルの柄x2、ビームサーベルの刃x2です。
 塗膜が厚すぎるのかバリがあったりしますが、質は上々。平手も二種類あるのがありがたいです。
 ビームサーベルの刃は少々硬い材質なので、簡単にへたる事はなさそう。


 付属品2/4
 左右副翼と、展開状態用パーツです。展開状態と閉じた状態はパーツ差し替えで表現します。
 材質はプラスチックなのかな? 硬いのでグニャグニャになる心配はありませんが、グレーの接続部分がへたる事は充分あり得るので要注意。
 ちなみに写真には写っていませんが、私の買った物は左右副翼に小さいけど浅くは無い傷が6箇所ありました。それでいいのか検品済み。
 本体との接続は本体側にある受け口に単軸接続です。ただし、本体側の接続パーツも回転するようになっているので、過不足無く動きます。


 付属品3/4
 左右の主翼です。翼部分は副翼と同じく硬いパーツなのですが、その先にある羽根パーツは柔らかい材質になってます。
 が、そのパーツに茶色い傷が……。最初は汚れかと思ったんですが、いくら拭いても取れない。写真を撮り終えてからデザインナイフで軽く削ると周囲の塗膜ごと削れ、その結果、もともと茶色い傷みたいなのがあったけど気にせず塗装していたらしいというのが判明。これでいいのか検品済み。
 翼部分と羽根部分の接続が違和感なく出来るかどうかも運次第ですので、買うときには祈りましょう。
 グレーの接続パーツとはボールジョイントで接続し、そのボールジョイントを更に単軸で繋いでいます。この接続パーツを本体側にある接続用のボールにジョイントして取り付け完了となります。


 副翼にはビームサーベルの柄が収納出来ます。ただし、手が届かないので柄を掴むという事はできません。


 付属品4/4
 これでラスト。ウイングガンダムの主力武器であるバスターライフル、ツインバスターライフル用接続パーツ、肩部マシンキャノンです。
 バスターライフルは左右がありますので持たせるときには注意。見分け方はグリップの位置。
 グリップとそのちょっと前にあるパーツが外せるようになっており、それを外して接続パーツと取り替える事でツインバスターライフルとなります。
 マシンキャノンはありません。無いと思った方が良いです。あまりにも出来が悪い。


 ローリングバスターライフル。
 ツインバスターライフルを分割し、両手に持った状態で機体ごと回転して広範囲の敵を一掃する無茶な技。
 スパロボ等のゲームでは強力な武器のひとつとして登場しますが、エンドレスワルツ本編ではコレやってません。
 バスターライフルを持たせるのにはコツがいるかも知れません。「コツがいります」と書かないのは個体差があると思われるから。
 私のですと右手は問題なく持てるのですが、左手はコツがいったので……。
 グリップパーツには、トリガーからその反対側まで続く凹凸があります。トリガー側の凸を人差し指と中指の間に、トリガーの反対側の凸を親指の付け根に合わせるように持たせると、しっかりと持ってくれます。


 サイズは缶コーヒーとほぼ同じぐらい。ただし本体サイズから受ける印象以上に幅と奥行きを取ります。


 腕の可動範囲。
 肘は二重関節で180度近く可動。
 二の腕には回転軸があり、手首もボールジョイント接続。
 片はアーマーを付けた状態でも写真程度には上がり、なかなか上々。


 脱臼。
 ツインバスターを構えるためか、肩の跳ね上げよりも下によく動きます。


 前後のスウィングはこんな感じ。
 アーマーを付けていてもスウィングを実感できるほどちゃんと動きます。満足満足。


 肩アーマーは3パーツ構成。
 跳ね上げ式アーマーは最近では標準になっていますね。白い部分はプラモデルとは違い、これ以上は動きません。ちょっと残念。


 首の可動範囲。
 これまたよく動く。上半身の可動範囲に関しては文句の付け所がないです。
 胸部中心の緑色の球体はクリアパーツです。


 腰の捻りはこんな感じ。
 腰も胸腹腰の3パーツ構成でそこそこ動きますが、うつむく感じにしようと思うとウイングの重量が邪魔になります。
 白い腹パーツは赤やら青やら色移りに忙しいです。


 マシンキャノンを取り付けると、強制的に首をかしげます。左右に付けるのはまず無理でしょう。ということで、マシンキャノンはオミットされました。
 さて、この写真をアップにしたのは理由があります。
 塗りの粗さが一番よく解って貰える写真だからです。特に目。塗っちゃ駄目なところまで黒で塗っているせいでタヌキみたいになってます。何この翼狸ゼロカスタム。
 右の写真が、一度全てのレビュー用写真を撮り終えた後で、溶剤で黒い所をちょこちょこと落とした状態。
 白で塗り隠すも、デザインナイフで削るも、溶剤で落とすも良し、とにかく「目が小さくて、隈取りが大きい」というのが全ての格好良さを台無しにしています。
 塗りの粗さと、エッジのゆるさも気になりますが……。EMIAゼータの頃のエッジはどこに行ったんだろう?
 ともかく、溶剤や薄め液を使う人は充分注意してご利用ください。私は久しぶり過ぎて加減が分からず、目の部分まで一部消してしまい、ガンダムマーカーで塗り直したらちょっと暗くなってしまいました。


 続いて下半身。と言っても、肩の機構を見せるという意図もある写真ですがw
 腰のサイドアーマーはボールジョイント。前アーマーは動かないので素材を活かして曲げてください。
 太ももは灰色のパーツを腰部と繋げる仕様で、回転軸が仕込まれています。
 さて、これまたちょっと大きめの写真なのは、太ももの青い色写りを見て貰うためです。
 サイドアーマーの色が移っちゃっているわけなんですが、こういうのを見ると無駄な塗装は省いて欲しいとつくづく思いますね。
 ゼロカスタムは塗装が唯一にして最大の、致命的な欠点です。


 開脚範囲はこのぐらい。
 足首の可動なども撮ろうかと考えましたが、やめました。
 膝の可動範囲は120度ほど。足の可動範囲は前後にはかなり動き、左右もそこそこ動きます。
 しかしまあこのガンダム、ウイングガンダムですから地に足付いてません。劇中では宇宙→空中→水没→海底から立ち上がる→空中→大破なので、海底から飛び立つシーン以外は全て浮いているという徹底ぶり。


 ツインバスターライフル発射。
 少々ネタバレになりますので、気になる方は総評まで読み飛ばしてください。
 エンドレスワルツの劇中では三度、このツインバスターライフルを発射していますが、ちゃんと両手で撃ったのは最初の一度のみで、二度目では発射と同時に左腕が吹き飛び、三度目は撃ちながら機体ごと大破してしまいました。
 というかエンドレスワルツでは主人公のヒイロの活躍は別としても、ウイングガンダムゼロのメカ的な活躍はほとんどありません。
 登場自体が本編が六割近く終わった所で、その後も五飛のアルトロンガンダムとの接近戦→大気圏突入→引き続き五飛と戦い、機体がどんどん壊れていく→戦闘放棄して海中へ没する→再起動しシェルターシールドへ→バスター三連射中に爆散という主人公機らしいのは最後の見せ場を持って行った所だけ。
 主人公機だから無敵というわけではなく、あくまでも目的を達成するための道具としてどんどん傷つき、最後には壊れてしまうという辺りがある意味とても「ガンダムの主役機」らしいガンダムです。

 
総評。
 ひたすらレビューの難しい製品だった。
 ヒイロのイメージ、劇中の動き、そんなことを考えると取れるポーズも取れなくなってしまうが、ここまで動くモデルならば劇中再現はしたくなる。ジレンマである。
 アクションベースと、まともなデジカメ、撮影ブースが必須だなと思ったが用意できないのでアクションベースだけは利用した。これがなければ始まらない。

 可動範囲は優秀で、デザインもきれいにまとまっている。
 主翼と副翼は流石に重たいので好みの位置でキープするには若干の工夫が必要。
 武器に関しても問題はほとんど無い。マシンキャノンはオミットだし。……マシンキャノン以外は問題ない。
 下半身、足首周りの可動も地に足を付けない機体にしては優秀なのだが、そこはやっぱり地に足が付いていない、接地性はある意味最悪、ある意味良好。
 主翼と副翼の先端を地面につけることで、優秀といえる接地性を発揮するのだが、翼を地面に付けない場合は接地性どころかマトモに立つことが出来ない。翼を外した素体の状態でも接地性は良いとは言えない。あくまでもアクションベースなどで宙に浮かせておくか、地面に置くなら翼の先端でバランスを取るしかない。
 ここまでで考えると、かなり秀逸な製品である。が、この後が問題だ。
 まず、ツインバスターライフル発射ポーズが劇中通りにいかず、正面から見ると顔が完全に隠れてしまう。
 次に、パーツが傷ついていたり曲がっていたりとかなり酷い。
 そして最後に、あまりにも塗装が雑すぎて、非常に粗い印象になってしまう。色写りも激しく、塗装のムラやバリでせっかくの造型が死んでいる所が多い。
 特に顔の塗装は最も気を付けなければいけないのに最も酷く、パッケージ写真が詐欺に思えるほど雑過ぎる。
 自力で塗り直せる人、隈取りを落とせる人、気にならない人には上々のMIAだろう。
 ただし、アクションベース系統は必須である。無いと魅力が半減する。この値段にするのならばアクションベースか、もしくはバンダイのアクションベース用の取り付けパーツでも付属しても良かったものだが……。

評価箇所(最大点数) 点数 理由
可動(20点) 18 下半身の可動は完璧とは言えないが、宇宙&空中用の機体と考えると過分なほど動くと言える。
上半身の可動は良好。EMIAガンダムほど無茶な肩可動は無いが、ウイングゼロとしては充分な可動。
首周り、特に見上げたりうつむいたりする可動はかなり優秀。
翼も良く動きますが、ちょっと将来的な保持力が心配。
付属品(10点) 7 換え手首の種類は嬉しい。
バスターライフルとツインバスターライフルも過度に大きく無く、保持に無理のないサイズ。
ビームサーベルは少々小さいかとも思うが、こんなものかというレベル。
翼は、私の買った物は傷だらけだったが、設計や造型自体は悪くない。個体差で評価が増減するだろう。
しかし空中用機体なのにベースが付属しないのは残念。
ZZやアッシマーには専用のベースがあったのだから、何とかして欲しかった。
プロポーション(20点) 17 全体的なデザインは流石に格好良い。
胸回りがもうちょっとデザインを主張してくれれば完璧だった。
細部ディティール(10点) 2 塗装が最悪。
細かいモールドや折角のプロポーションを悉く塗装で破壊している。
これは大げさな表現ではなく、事実塗膜でモールドが潰されている箇所もある。
エッジがゆるすぎるのも問題だが、これも塗装のせいで余計に鋭さを失っている部分が多い。
関節保持力(10点) 7 開封段階では中々良好。バスターライフルを持ち上げても保持できる。
翼や、肩関節の基部、翼の重さに負ける腰の捻り関節は、若干不安。
言ってみれば全身がケレン味であり、全ての動作が見栄である。
そのため、劇中を再現しようと思うと関節には負担を掛けることが多い。
将来的には全身の関節がへたる可能性は充分にある。
コストパフォーマンス(10点) 6 可動範囲や翼を考えると値段相応だが、あまりにも塗りが雑すぎる。
この塗装で余計に費用がかかっていると考えると、コストパフォーマンスも悪く感じる。
自分で塗るからベースを付けて値段据え置きにしてくれと言いたくなってしまう。
満足度(20点) 16 顔の塗りや、色写り、塗装の雑さにパーツの傷。第一印象は最悪だった。
恐らくレビューをしなければ印象も大して変わらずに「駄作」の一言で押し入れ行きだっただろう。
だが、内心「どんな酷評をしてやろうか」と思いながらも様々なポーズを苦心して取らせてみて、撮影。
レビューしづらいなと困りながらもポーズを変えて撮影、古いデジカメの限界を感じてはまた撮影。
撮りに撮ったり150枚。
気づけば、「なんだここまで動くのか、こんなにポーズ取れるのか」と好印象に変わっていた。
アクションベースを駆使し、ポーズのアイディアや格好良く見えるベストな角度を考えれば、そう悪くはない。
塗りの雑さを除けば良いEMIAだと言えよう。やはり欠点はそこなのだが、それさえ乗り切れば佳作と言える。
合計(100点) 73点


  

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